文明の衝突
こちら読みました
- 作者: サミュエル・P.ハンチントン,Samuel P. Huntington,鈴木主税
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1998/06/26
- メディア: 単行本
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本書は資本主義対共産主義という構図が終わったのちに、世界はどのような秩序を形成するのかについて述べた本です。
著者はイデオロギー(資本主義、共産主義)の次に来るものとして、文明(文化的なアイデンティティ)を挙げています。具体的には、西欧、ロシア、イスラム、ヒンドゥー、中華、日本、ラテンアメリカといった区分です。
日本の衰退が顕著となった今、主要な大国としてカウントされている日本の扱いに違和感がありますね。
前回紹介した
でも少し紹介したように、ローマカトリック・プロテスタントと東方正教会の隔たりは現在のウクライナ問題にも現れているように重要な要素です。本書でウクライナの分析に多くのページが割かれていましたが、本当に紛争が生じてしまうとは。
また、イスラム諸国での若年層人口の増加が他の文明に比べ著しく、それに伴い問題が生じるという指摘は、アラブの春といった形で現れています。
今となっては当たり前のような記述の数々ですが、20年前に執筆されたとは驚きです。予言の書といわれるゆえんでしょう。
これからの時代、日本は、私たちはどう生き残っていくのか。他国を巻き込むアイデンティティがない日本はこれ以上の拡大は望めず、大国・中国を隣にして微妙なかじ取りを迫られています。
テーマ
歴史上はじめて国際政治が多極化、多文明化している。文化レベルでの文明のアイデンティティが、冷戦後の統合、分裂あるいは衝突のパターンをかたちづくることを示す。
さまざまな文明からなる世界
近代化?(×:西欧化、普遍的な文明)
第1章 世界政治の新時代
20世紀後半に起きた紛争はほとんどが文明・文化を異にする勢力同士の衝突
第2章 歴史上の文明と今日の文明
第3章 普遍的な文明?近代化と西欧化
文明間バランスのシフト
文明間のパワーバランスは変化。西欧は衰えつつある。アジアは拡大。イスラム諸国は不安定。非西欧文明は自文明の価値を再認識。
第4章 西欧の落日:力、文化、地域主義
第5章 経済、人口動態、そして挑戦する文明圏
経済成長率、人口動態から各文明のこれからの動向を予想している。イスラム諸国の若者の割合は他の文明に比べ非常に高く、2020年代まで拡大や対立を引き起こしていくことが予想される。
文明の秩序の出現
文明に根差した世界秩序の出現。文明の更新は不可。
第6章 文化による世界政治の構造変化
第7章 中核国家と同心円と文明の秩序
西欧は普遍主義的な主張を持つため他の文明と衝突。イスラム諸国と中国との衝突は深刻。
第8章 西欧とその他の国々:異文化間の問題点
第9章 諸文明のグローバル・ポリティクス
第10章 転機となる戦争から断層線(フォルト・ライン)の戦争まで
第11章 フォルト・ライン戦争の原動力
文明の未来
西欧、アメリカは内省して非西欧社会からの挑戦に備えるべき。文明間の戦争を避けるには世界の指導者が世界政治の多文明化を理解しそれを維持する努力をする必要がある。
第12章 西欧、様々な文明と単数形の文明