人はどう生きるか。

Ecclesiastes 3:11

一神教の起源

 こちら読みました

一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか (筑摩選書)

一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか (筑摩選書)

 

一般的に、 一神教とは多神教が淘汰された結果、あるいはなぜなぜ思考の結果、一つの神を信仰するに至ったものとして、言わば宗教史上の進化論のようなものだと漠然と考えられています

 

しかし、一神教が生まれたのは古代イスラエルだけであり、他の地域ではその例を見ない事から、思想史上の必然とは言えません。一神教は決して進化論のような在り方で生まれたものでは無く、それは一人の天才的な宗教家による、宗教革命であったのだというのが、著者の主張です。

 

多神教の中の最高神一神教の違い

ユダヤ教以外の宗教は最高神を産みはしましたが、そこから一神教には至りませんでした。なぜユダヤ教だけが一神教たりえたか、という推理と論証を進めていきます。

 

唯一神の誕生にはイスラエルの繁栄と没落がその背後にあり、全能者であるヤハウェの神は虜囚となったイスラルの民にとって、戦いで勝利を約束する神から、人はヤハウェに対して如何にあるべきかと云う、生きること自体を問いかける神へと次第に変貌していく。それは既に現世利益とは全く別の、人としての存在を問う神が歴史上始めて誕生したのだと。

 

それがイエス・キリストに受け継がれ、世界宗教として発展していく源となる、その過程が資料とその解釈を紹介しながら描かれています。

 

人間と神は文明の初期において切っても切り離せない関係ですが、多くのアニミズム多神教が隆盛を極める中で唯一神信仰がひっそりと出現し、数千年で世界のおよそ半分を占めるまでに至るのは非常に興味深いです。

 

人間の脳の機能と信仰はある意味セットのようなものであるという考え方が、サピエンス全史等で指摘され始めているのは、私たちは何者なのかという問いに対して1つのカギを握っていると考えられます。